“プログラミング的思考”が活きる5つの部活動・習い事

“プログラミング的思考”が活きる5つの部活動・習い事

近年、教育現場で注目を集めている「プログラミング的思考」は、コンピュータのコードを書くときだけに必要なものではありません。問題を整理し、筋道立てて解決していくスキルは、さまざまな部活動や習い事にも応用できます。特に、論理的に物事を考え、改善し、成果につなげる一連のプロセスは、学生生活における多様な活動で大いに役立ちます。そこで本記事では、ロボコンやeスポーツ、吹奏楽の譜面管理などを中心に、「プログラミング的思考」が活かせる5つの部活動・習い事の事例をご紹介します。また、現場で指導にあたる顧問の先生へのインタビューを通じ、具体的な活用方法や生徒たちの成長の様子を探ります。

1. ロボコン:試行錯誤が成果を生むロボット製作

ロボットコンテスト(ロボコン)は、まさに“プログラミング的思考”を体現する場です。設計図をもとにロボットを組み立て、センサーの情報をどのように処理して動作に反映させるかを考える過程は、論理的思考や問題解決力を鍛える絶好の機会になります。

例えば、「ラインを正確にトレースするにはセンサーの感度をどう調整するか?」といった具体的な課題に対して、センサーの値を変えて実験し、上手く動かない場合は原因を洗い出し、再びプログラムやハードウェアの調整を行う──この繰り返しが大切です。部員同士で役割分担し、プログラム担当・ハード担当・設計担当などに分かれて協力することで、チームワークも養われます。

実際に、ある高校のロボコン部の顧問の先生に取材したところ、「ロボット製作ではトラブルがつきものですが、そのたびに仮説を立てて小さく実験し、失敗を元に修正を重ねる姿勢が身に付きます。これはプログラミング学習に限らず、勉強や就職後のプロジェクト管理にも大いに活かせる力です」と語ってくださいました。

2. eスポーツ:戦略的思考とデータ分析が勝利を生む

eスポーツは「ゲームを楽しむ」という要素だけでなく、チーム戦術や個人のデータ分析を通じて論理的に勝ち筋を導き出す点が注目されています。たとえば、対戦型のシューティングゲームやMOBA系(マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ)ゲームでは、マップの地形やキャラクター特性、相手チームの行動パターンなど、多くの要素を考慮して最適な戦略を立てる必要があります。

この過程で重要になるのが、目の前の状況を素早く把握し、最適解を導く“プログラミング的思考”です。たとえば、試合のリプレイ映像を分析するとき、勝因と敗因をファクト(事実)ベースで整理し、「どういったタイミングでリスクを負うべきか」「どのキャラクターの組み合わせが最適か」といった条件を洗い出していきます。課題を細分化し、それぞれに対して具体的な対策を考え、チームの戦略としてまとめあげるプロセスは、まさにプログラミングのアルゴリズム設計に通じるものがあります。

顧問やコーチの立場からは「生徒たちはゲームの上達だけでなく、仲間同士で情報共有しながら論理的に検討を重ねる姿勢を身につけています。部活動の枠を越え、普段の学習にも良い影響があるようです」との声が挙がっています。

3. 吹奏楽:デジタル譜面管理と効率的な練習プラン

一見、プログラミングとは縁遠そうに思える吹奏楽部でも、デジタルツールを活用することで“プログラミング的思考”が活かされる場面があります。たとえば、従来は紙の楽譜を大量にコピー・配布していたものを、タブレットやスマートフォンで閲覧する仕組みに切り替える学校が増えています。

この際、クラウドストレージや譜面管理アプリを利用して楽譜を一元管理すると、更新や共有がスムーズになり、部員それぞれのパートの進捗状況を見える化できます。また、パート練習の録音ファイルを簡単に共有しておけば、各自がどこでミスしやすいかを互いにフィードバックできます。こうしたデータやファイルの整理・運用方法を最適化する過程は、まさしくプログラミングでいう「アルゴリズムの設計」や「効率化」にあたります。

吹奏楽部の顧問の先生は次のように語ります。「数年前までは楽譜の管理に時間や手間がかかり、生徒たちは練習時間を十分に取れない日もありました。しかし今ではデジタルツールを使うことで、楽譜探しやコピーといった作業が大幅に軽減され、練習そのものに集中できています。さらに部員たちは、どのようにデータを共有すればミスが減るかなど、自主的に考えて改善策を提案してくれるようになりました。」

4. ダンス・チアリーディング:動画分析による細かな振り付け調整

ダンス部やチアリーディング部では、練習風景を動画に撮影して、チーム全員でチェックすることが一般的になりつつあります。特に、ジャンプのタイミングやフォーメーションの配置など、複雑な要素を組み合わせてパフォーマンスを完成させるうえで、動画分析は非常に重要です。

ここで活用されるのが“プログラミング的思考”のアプローチです。たとえば、チーム全体の動きを細かいステップごとに分解し、各メンバーがどのようなポーズを何秒間取るかをデジタル表にまとめます。次に、その記録を基に改善点を洗い出し、実行と検証を繰り返すことで、自然と精度が高まっていきます。ロボコンでのセンサー調整ほどハードウェア寄りではないものの、手順を段階的に分解し、各要素を磨き上げるという点に“プログラミング的思考”が息づいているのです。

この部活の顧問の先生は「踊りや動きを感覚的に捉えるだけでなく、数字や時間軸と関連づけて分析する習慣が付きました。結果として、振り付け作業でも生徒たちが『ここを1秒短くして、次を1秒長くするとスムーズになる』など、まるでプログラムのデバッグをするように提案してきます。部活動で身についたロジカルな姿勢は、将来の多様な進路でも生かせるでしょう」と話します。

5. 写真・映像制作:ストーリーボードと編集フローの最適化

写真部や映像制作のクラブでは、一見アーティスティックな才能が重視されるように思われがちですが、実際には作品づくりの裏側で様々なデジタル技術が使われています。特に動画編集では、撮影した素材をシーンごとに分類し、適切なカットを選び、BGMや字幕を挿入するといった工程が必要になります。そのフローを効率化するうえで、タスクを段階的に整理していく“プログラミング的思考”が役立ちます。

ストーリーボード作成の段階で、「どのシーンが重要か」「どの順番で並べると視聴者に伝わりやすいか」といった論理的な検討を行い、編集ソフトではそれぞれのクリップの配置やエフェクトを最適に適用するように設計します。試作した動画を見直すたびに、不要なクリップを削除する、音量バランスを調整するといった具合に細かく修正していく工程は、まさにプログラムのテストと改修に近いプロセスと言えるでしょう。

顧問の先生の話では「映像制作も回数を重ねるごとに、生徒たちは”どこを変えればより良くなるか”を見極めるコツを掴んでいます。試行錯誤のプロセスは、問題解決力を養う良い機会ですし、仲間同士でアイデアを共有し合うチームワークにも繋がっていると感じます。」とのことです。

顧問の先生インタビュー:プログラミング的思考がもたらす効果とは

今回取材を行った複数の顧問の先生方によると、部活動や習い事で“プログラミング的思考”を実践することの利点として以下が挙げられました。

  • 問題解決力の向上:トラブルや課題に直面したとき、原因を分析し対策を立てるプロセスが定着する。
  • チームワークの強化:役割分担しながら論理的に意見を出し合うことで、成果物のクオリティが高まるだけでなく、相互理解も深まる。
  • 主体的な学習態度:具体的な目標(試合で勝ちたい、より良い演奏をしたいなど)があるため、自ら学びを深める動機がはっきりする。
  • 将来への応用:大学進学や就職後も、プロジェクトの進め方や思考法として活用しやすい。

プログラミング学習と聞くと、パソコンに向かってコードを打つイメージが強いですが、実はこうした思考法を身につけることが最大のゴールと言っても過言ではありません。ロボコンやeスポーツはもちろん、吹奏楽やダンス、映像制作といった文化部や芸術分野でも、論理的アプローチと創造力を掛け合わせることで活動の質が向上します。

まとめ:部活動や習い事でこそ活きる「プログラミング的思考」

今回は、ロボコン、eスポーツ、吹奏楽、ダンス・チアリーディング、写真・映像制作といった5つの事例を取り上げ、“プログラミング的思考”がどのように生かされているかをご紹介しました。部活動や習い事の現場は、生徒たちが実践を通じて成長を実感できる貴重な場所です。単にコードを書くだけでなく、自分たちのアイデアを形にしたり、問題に直面したときに粘り強く解決策を探したりする力こそ、将来的にあらゆる分野で必要とされるスキルと言えるでしょう。

顧問の先生のインタビューでもわかるとおり、プログラミングの授業や塾では学べない「実践的な試行錯誤」と「チームワーク」が部活動や習い事では自然に身につきます。保護者の方にとっても、子どもたちがパソコンに向き合うだけでなく、仲間や指導者と協力して成果を作り上げる姿を見守るのは安心につながるのではないでしょうか。

これから部活動や習い事を選ぶ際には、「どんな活動ならば論理的・計画的に物事を捉え、改善を図る力が身につくか」という視点を加えてみるのも良いでしょう。プログラミング的思考は、スポーツや芸術分野であっても柔軟に活かせる普遍的な力です。ぜひ、お子さんが楽しみながらも成長できる活動を一緒に見つけてあげてください。

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